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あがら おもしゃいやしてぇ~ よう~ ゆわよ ノシ

JR西日本鉄道 福知山線 脱線転覆事故。音声通話記録に人を想う、四月二十五日。九時十八分五十四秒【鉄道事故 案件】

 

事故から十五年の歳月が過ぎた。暴走した列車車輌は、マンションに激突し大破。乗客と運転士107人が死亡、562人が負傷した未曽有の大惨事でした。ことしはコロナ騒ぎで、例年行われていた慰霊祭は、中止となったそうです。

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列車にはたくさんの乗客が乗り合わせている。しかし運転室には、運転士ひとりのみ。孤独な閉鎖空間での仕事を、常にしいられている。刻々運行状況は変化し、突然の指示命令もくる。しかし、ミスは許されません。

 

西日本旅客鉄道 福知山線 列車事故

▷日時/平成十七年四月二十五日、九時十八分五十四秒、事故が起る。
▷車輌/福知山線(JR宝塚線上り快速 「5418M」207系 七輌編成
▷被害/乗客と運転士あわせ、合計107名が死亡し、562名が負傷した。

▼事故現場にある慰霊施設「祈りの杜」は、一般公開されている。

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事故現場周辺

当該車両の運行遅れは『80秒』だった。このわずかな遅れを取り戻すため回復運転を始めた直後に、脱線転覆事故が発生。我々の人生において、たとえ80秒の遅刻が60秒になったとして、なんの意味があるだろうか…?

 

①事故のあらまし

 

当該列車は、午前九時四分に宝塚駅を出発し、時速120キロ前後で北伊丹駅を通過。伊丹駅の停止位置、手前643メートル地点を約113キロで走行中、停車をうながす警告音、ボイス機能※1 がまず作動した。再びボイスと警報が鳴りその直後に、運転士は常用ブレーキ(B8※2)を使用した。その時、オーバースピードに気ずいた車掌が、非常ブレーキを操作。

また運転士も非常ブレーキを使用し、約72メートルもオーバーラン伊丹駅に停車した。この72メートルは、通常ではありえないミス。3.5車輌程度が、前方にズレて停止した。先頭車輌からはホームではなく、草っ原が見えた。

(※1 停車駅に接近すると運転士に「停車です、停車です」と女性音声で知らせる)(※2 列車ブレーキには「常用ブレーキ」と「非常ブレーキ」と「予備ブレーキ」の三種がある。B8は、常用ブレーキの最大値。さらに押し込むと、非常ブレーキとなる。予備ブレーキは通常使われない)

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運行経過表(時系列)

乗降客のために、所定停止位置へと戻る後退操作を始める。ところがまた、停止位置を三メートル戻り過ぎ、伊丹駅には9時15分43秒の到着となる。伊丹駅からの出発時刻は、「1分20秒の遅れ」となった。

車掌が次駅の案内放送を始めたところ、運転士からの車内電話があり「まけてくれへんか?」という。車掌は、行き過ぎた距離を過小報告してほしいといった意味と受け取り「だいぶと、行ってるよ」とこたえた。すると再度、運転士が「まけてくれへんか?」という。

その時男性の乗客が、客室との間の仕切り窓をたたいたので、車掌は車内電話を受話器に戻した。車掌は、列車無線で「オーバーランを八メートル、遅延時間は、一分半」と司令所に過小報告をした。

(※乗客に「なんで、お詫びの放送せーへんのや?」「遅れているのに、あやまらんのか」と言われ「いまやろうと思ってました。いまから放送しますのでちょっとお待ち下さい」と応えた)

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運行経過表(時系列)

当該車両のフルノッチ『力行(りっこう)』が始まる。猪名寺駅通過後。速度制限は、時速120キロだったにもかかわらず、塚口駅の手前約75メートル地点で、時速124から125キロに達し、運転士はノッチオフ、弱いブレーキ(B1)をかける。この時、速度超過にたいしての認識があった。約一分十二秒の延通(えんつう)で、塚口駅を場内進行。

そして、続く速度制限70キロの右カーブには、116キロで進入。まず常用ブレーキ(B7)をかけ105キロまで落とし、さらに最も強くブレーキ(B8)もかけたが、九時十八分五十四秒、左前方に車輌が横転するように脱線し、転覆した。

(※事故現場となった右カーブ、半径304m。塚口駅の南側 約1km、尼崎駅の手前、約1.4kmの地点。平成八年十二月に半径600メートルから、現行の304メートルに付け替えた。緩カーブから急カーブに付け替える工事は、滅多にない)

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事故現場状況

先頭車輌は一階駐車場内の奥へと突入し、二輌目はマンション外壁へ横から激突、さらに後続の三、四車輌に挟まれて圧壊。建屋壁面に巻き付くような状況で、前二輌は原形をとどめないほどまでに大破した。

 

②原因は何処にあったのか?

 

運転士が伊丹駅にて、過小報告を求める車内電話を、車掌に切られたことを「断られたのか」と思い込み、車掌と指令員との『無線会話内容に意識がとられ、または自分のミスに動揺し、速度制限を失念。右カーブ進入時のブレーキ操作がそのために疎かになった』と考えられている。

また、当該運転士の焦りや運転注意がそれた背景には『大幅なオーバーラン、速度超過、非常ブレーキ作動等々のミスにより「日勤教育、いわゆる懲罰的社員教育」を受けさせられることを、ひどく恐れていたからである』と事故調査報告書ではそう指摘している。これは重要ポイント。

 

③主な傍証としては

 
<経験不足な運転士>

『当該事故を起こした運転士は、当時23歳 運転歴は11か月で、運転技術や勤務姿勢が未熟だった可能性』を指摘されている。

JR西日本では長期間にわたり新規採用者を見送り、運転士の年齢構成が「中抜き体制」となった。運転経験が浅い新人に、運転技術を伝えるべき中堅運転士が、運行現場から消えたことが以前より問題視されていた。

『事故を起こした当該運転士は、過去に運行ミスなどで三回、日勤教育を受けていたが、事故直前の行動からみて何らかの「注意障害(ADHDやASD症候群など)」を抱えていた可能性がある、と心理学上の見地からの指摘がある』(※出典 ウキペディアより)

単純に運転士によるヒューマンエラーと、結論していいのだろうか?ワタシには、とても疑問が残ります。 

▷ここで、伊丹→尼崎間の『線見(せんみ)旅』に、出かけてみましょう。現場状況がよく理解できます。

youtu.be

<運転室の奇妙な状況>

運転士は一両目の運転室で、圧死していた。乗務員には「貸与された手袋を着用し、しっかりボタンをとめること」との社内規定があり、事故後に調査したときに、運転士の左手には『白手袋』が着用されていた。

しかし右手には着用なく、右手袋は運転室内にあった。また、貸与されていた特殊な「赤鉛筆一本」が、運転室内に落ちていた。このことから推論出来るのは、司令員との無線のやり取りを「運転中に右手でメモしていたのではないか?」ということである。乗務後はすぐに乗務員が報告を上げる義務があった。この対処のため「パニック症状」に陥っていた可能性が疑われます。

 

<何らかの障害?の可能性>

例えば注意障害の人は「とかくミスが多い」。なので失敗を怒られることも多くなり、三回もの「日勤教育※」が追い打ちをかけ精神が病んでいた(通院、服薬?)と推認してみれば、こんな怖い話はないだろう。

未必の「自殺 or 殺人」の可能性すら考えられます。運転士が注意障害だろうが鬱病になろうが(本人や医師が認めなければ)列車運行からは、なかなか外してはくれない。あるとするなら心底嫌な日勤教育である。

JR各社では“運転士不足が常態化している”ので、洗脳教育で鍛え直し戦場に再投入するのだろう。まさにこれ「パワハラ地獄」である。私には、彼もまたその犠牲者だったと想えますが…。

(※国鉄時代から続く、JR西のブラックシステム。「乗務員休憩室や詰所や点呼場所から、丸見えの当直室の真ん中に座らせ、事象と関係ない就業規則や経営理念の書き写しや作文、レポートの作成を一日中させた。トイレに行くのも管理者の許可が必要で、プラットホームの先端に立たせて発着する乗務員に「おつかれさまです。気をつけてください」などの声掛けを一日中させたり、敷地内の草むしりやトイレ清掃などを命じるなど「見せしめ」や「晒し者」にする事例もあれば、個室に軟禁状態にして管理者が集団で毎日のように、恫喝や罵声を浴びせ続けて「自殺や鬱」に追い込んだ事例もあった。」(出典 ウキペディアより)

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④硬直した企業体質 

 

当該列車にはJR西日本の運転士二名(非番)が乗車していた。この社員らが職場に電話連絡を入れたところ、上司からは何と“出勤を命じ”られている!

事故救助より日常出勤を優先させる『JR西日本の人命軽視体質』として報道され、当時大批判を浴びた。彼ら二人も列車事故の被害者なのになんてことなのか、とてもありえない話し…

 

<JR西日本の鬼畜上司>

以下、事故車輌六両目に乗車していた、JR西日本の某運転士の証言である。

中山寺駅で乗車し、六両目の右第三乗降口の扉付近に立っていた。(中略)名神高速道路を過ぎた辺りで、大きな揺れが「ガタガタ」ときたので扉横の手すりにつかまろうとしたが、それができないまま転倒し、他の客と団子状態で第一乗降口と第二乗降口との間まで「ズズズズー」と滑り、当該列車は、非常ブレーキではない変な力で「ドーン」と停まった。その間に室内灯が消え、予備灯が点いたことを覚えている。

止まったとき、周りの乗客の「痛いっ、痛い」という声と、五十歳くらいのサラリーマンの「脱線している」という声が聞こえ、砂埃が舞っていた。その後、七両目に移動して座っていたとき、車掌が電話機か無線機でやり取りをしているのが見えたが、その声は聞こえず防護無線機の音も聞こえなかった。

七両目に移動後、職場に電話して「電車が脱線した。それに乗っている」と伝えたところ「出勤は、何時だ?」と聞かれたので「(所定の出勤時刻は)14時です」と答えると「(その時刻までに)出てこられるな」と言われたところで電話が切られた。

職場に向かおうとしたとき、第一新横枕踏切道の特殊信号発光機が「R(赤色)現示」であり、特急(北近畿)が停まっていたので危ないと思い、遠回りになるが名神高速道路の塚口駅方の跨線橋を、渡って職場に向かった』というのです。

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これはいったい何なんだろうか??確かにこれでは、全く言い訳の余地はない。JR西日本の、救い難いほどの『隠蔽体質』であり『風通しの悪い企業風土』がそうさせるのだろう。

(※鉄道信号例 🚥 緑色二灯現示=高速進行、制限160km。緑色現示=進行(制限標識)。黄緑色現示=減速、制限70km。黄色現示=注意、制限55km。黄黄色現示=警戒、制限25km。赤色現示=車輌停止)

 

~事故現場の生々しい状況が伝わってくる。その音声記録~

『事故直前、本件車掌と輸送指令Aとの音声通話記録』

 

転覆事故寸前に運転士と輸送司令Aが会話したのか?そして、そのプレッシャーで運転士の操作注意が削がれたのだろうか?列車転覆後も輸送司令Aは、何故か執拗に運転士を呼び出している。

輸送指令Aの口述によれば、こうだ『…自分は車掌の経験があるだけで運転士の経験がなく、列車の運転士が運転に忙しいかどうかというようなことは判からないので、こういうときでも列車無線で運転士に呼びかけることがあるが、運転士にその余裕がなければ応答しないであろうし、応答がなければ運転士にその余裕がないのかと思って、自分も必要以上に呼びかけることはしない』と、随分な言い訳をしている。

車掌乗務の経験があるならば、それで充分だろう。当該車輌は必死のパッチ回復運転なのだから、そんな無線の相手する暇はない。それをなぜ執拗に呼びかけるのか?その意図は何か?

下図「運行の経過」に記載がある会話部分を転記する。

(※回復運転とは、列車が遅れている時に通常より速度を上げ、ブレーキのタイミングを遅らせる、ホームで戸閉めを早める等々各駅間で数秒ずつ稼ぎ、全体の遅れを取り戻してゆく最後の手段) 

 

「輸送司令員A」と「当該車掌」との通信会話

 

(呼び出し音)

(指令員A)こちら、指令どうぞ。

(本件車掌)5418M の車掌です。どうぞ。

(指令員A)5418M 車掌、内容どうぞ。

(本件車掌)えー、行き過ぎですけれども、後部限界表示およそ8メートル行き過ぎて、運転士と、えー、打ち合わせの上後退で、えー、一分半遅れで発車しております。どうぞ。

(指令員A)後部限界を8メーター行き過ぎ。えー、後退、客扱い。えー、遅れにつきましては、何分でしょうか。どうぞ。

(本件車掌)あ、一分半です。どうぞ。

(指令員A)1分30秒遅れ。えー、それでは替わりまして、再度、5418M 運転士、応答できますか。どうぞ。

(指令員A)5418M 運転士、応答して下さい。どうぞ。

 

~9時19分15秒、録音記録終了~

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そして脱線後に車掌が、司令員Bに携帯電話で連絡をする。時刻にして、九時二十分以降と思われます。

 

『事故発生後、業務用携帯電話による、本件車掌と後続運転士と輸送指令Bとの音声通話記録』

 

「新大阪総合指令所 輸送指令B」と「おとぼけ当該車掌」との会話

 

この二人の会話内容からは、事故状況特有のヒリヒリした空気(切迫感)が、なぜか感じられない。司令員は、脱線車輌の「損傷具合」ばかりたずねている。その一方、後続の運転士からは、現場の焦燥と緊張感を感じるのだが。そこがとても不思議なのである。

(※想像力働かせ、一度声に出して読んでみてください。とても違和感を感じます。『本件車掌…指令(A)が運転士さんの方に連絡したんです。そのあと、急ブレーキが掛かりまして、停車中です』←この発言が、気にかかる。乗客ですら車輌転覆に気づいている状況だった)

 

(指令員B)はい。JR西日本の指令です。どうぞ。

(本件車掌)すいません。こちら5418Mの車掌です。

(指令員B)5418M、車掌どうぞ。

(本件車掌)え~、塚口から尼崎間、走行中ですけど。

(指令員B)塚口、尼崎間、はい。

(本件車掌)はい。えーっと、無線通じないもんで。

(指令員B)運転士の無線が通じない、はい。

(本件車掌)私も、何も入りませんので、電話かけました。

(指令員B)はい。どうぞ、内容どうぞ。

(本件車掌)えーっと、伊丹を行き過ぎて指令に、連絡したんです。その後、運転士さんがいう、いう合図で運転士さんが、急ブレーキ取りまして。

(指令員B)うん、ちょっと、意味が分かんないやけど。伊丹の所定位置を行き過ぎて、止まったということ?

(本件車掌)ちょっと前行き過ぎて、そのまま発車したんです。

(指令員B)え~、車掌さん落ち着いて、ゆっくりしゃべってよ。

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(本件車掌)はい。伊丹駅を後部限界過ぎまして。で、所定位置戻しまして、発車した後に連絡したんです。指令の方に。それで話をして、あと「運転士さん」とゆうて、あの、指令が運転士さんの方に連絡したんです。そのあと急ブレーキが掛かりまして、停車中です。

(指令員B)いま、まっとるということ。

(本件車掌)はい。

(指令員B)何で、止まっとるの?

(本件車掌)ちょっと分かりません。

(指令員B)運転士に、無線通じなければ、運転士に、えー、運転士に非常時用の携帯でかけてくれと「ブーブッブブ」て、鳴らして。

(本件車掌)あ、すいません。いま、あの、脱線しております。

(指令員B)脱線しとる?

(本件車掌)脱線しとります。

(指令員B)えー、えー、何?

(本件車掌)脱線です。

(指令員B)何しとる。もう一回ゆっくりゆうて。

(本件車掌)脱線しております。

(指令員B)脱線?

(本件車掌)脱線です。脱線事故です。

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(指令員B)えーっと。列車が脱線してるということ?

(本件車掌)そうです。

(指令員B)あ~、それは何、車と当たっておる、とかそういうこと。

(本件車掌)そうじゃないですけど、前、前が、ちょっとよく見えないですけどね。

(指令員B)うん。前はよく見えないけど。

(本件車掌)はい。

(指令員B)脱線しているかも、わからんということ。

(本件車掌)脱線してます。線路から完全に、はみ出しております。

(指令員B)ちょっと、車掌さん、このまま待ってよ。

(指令員B)運転士さん。

(本件車掌)はい。

(指令員B)車掌さん。

(本件車掌)はい。

(指令員B)まずね、いま、止まっとる位置は、止まっている位置は?

(本件車掌)はい。

(指令員B)運、車掌さんの真横を見て電化柱の番号か、何か分かりますか?

(本件車掌)え~、番号は分からないんすけど、平尾自動車工業ちゅうとこの手前です。

(指令員B)平尾自動車工業の手前。

(本件車掌)手前ゆーか、その横に止まっております。

(指令員B)ほならね。

(本件車掌)はい。

(指令員B)えーっと、どういうことか、よくわからんのやけども、電話このままの状態でね。

(本件車掌)はい。

(指令員B)えー、まずは状況を教えてくださいな。ほんで。

(本件車掌)状況ですか。

(指令員B)うん。

(本件車掌)無線が完全に通じないもんでね、呼び出そうとしても。それで、急ブレーキ掛かったもんで、お客さんがみはりまして「どうされたんですか」と言ったら「前、脱線してる」ということで、お客さんが。

(指令員B)そしたら車掌さんね、一遍進行左側、列車から降りて、一遍、その前に走ってください。

(本件車掌)あ、分かりました。

(指令員B)電話はこのまま繋ぎますから。

(本件車掌)分かりました。

(指令員B)うん。

(本件車掌)このまま、ほんなら、行ってみます。

(指令員B)ほんで、車掌さん。

(本件車掌)いまから行きますんで。

(指令員B)早く行って。車掌さん。

(本件車掌)はい。

(指令員B)いまどこにおる?

(本件車掌)いま、あの、あの、線路に降りております。

(指令員B)それで。

(本件車掌)見に行ってます。

(指令員B)うん。

(本件車掌)ちょっと、見に行きますんで。

(指令員B)うん。

(本件車掌)降りて、道路際の方行ってます。道路際まで行っております。

(指令員B)車掌さん。

(本件車掌)はい。

(指令員B)車掌さん、いまどこまで来た、車掌さん。

(本件車掌)負傷者がたくさんですんで、、恐れ入ります。

(指令員B)負傷者がたくさんおるということやな。それは、それは列車に乗っているお客様ゆうこと?

(本件車掌)そうです。

(指令員B)うん。そんでね、車掌さん。

(本件車掌)はい。

(指令員B)前に、前、前まで、行ってもらっとるか?もう。

(本件車掌)まっ、前ですか。

(指令員B)列車の運転席まで行ってもらった。前の運転士のとこまで。

(本件車掌)運転士さん、ちょっと、あのー。

(指令員B)ほならね、いま、車掌さんどこにおるの。

(本件車掌)え~と、一番前の方でなんですけど。

(指令員B)ほんなら、その列車は、その列車は、なんで脱線しとるのか?自動車とぶつかっとるとか、そういうことで、そういうことなんですか?

(本件車掌)自動車じゃないと、思います。

(指令員B)自動車では、ないけども。

(本件車掌)はい。

(指令員B)ほんならね、それ七両編成やわな。

(本件車掌)はい、そうです。

(指令員B)七両編成で前の方は、どういう状況になってますか?

(本件車掌)前の方は、もう、完全に、グチャグチャになってます。

(指令員B)グチャグチャになっとるて、何がグチャグチャになっとるの。

(本件車掌)えー、へこんだ状態になってます。運転士さん、運転士さんの方が。

(指令員B)運転士の、一番先頭車がグシャグシャって、意味が分からんのやけど。

(本件車掌)あの、事故におうた車の状態、考えていただいたら分かると思います。

(指令員B)だからそれは、自動車と衝撃してるとか、そういうことなんですか。

(本件車掌)自動車とは、衝突しておりません。

(指令員B)自動車と衝突してないのに、何で、自動車と衝突していないのに、脱線しとるということですか?

(本件車掌)そうです。スピードか、出し過ぎか、あれなんか、ちょっと分からんですけど。

(指令員B)ほんで、運転士はいま、どこにいますか。

(本件車掌)運転士さんですか。

(指令員B)うん。

(指令員B)車掌、5418M車掌、当該の車掌。

(本件車掌)はい。救急車の手配よろしくお願い致します。あのー。

(指令員B)もし。

(本件車掌)はい。

(指令員B)車掌さん。

(本件車掌)はい。

(指令員B)運転士は、ほな、近くにいますの?

(本件車掌)いや、おら、いないです。

(指令員B)運転士がいない。うん。

(本件車掌)へっこんだ状態になってます。

(指令員B)そんで、先頭車の状況を、ゆっくりゆうてよ。

(本件車掌)先頭車は、え~と、脱線した状態で、横になっております。あの…。

(指令員B)大阪に向いて、右側にゆがんでるの、それとも、左側にゆがんでるの?

(本件車掌)左側です。

(指令員B)左側に向かって、傾いているんだね。

(本件車掌)はい。

(指令員B)ほならね、そこに行くまでに、ほんまにね、あのー踏切ありましたか?

(本件車掌)踏切と、ありますけど、なんもありません。

(指令員B)なんでそれが、先頭車両が、運転席が潰れている状況なのですか?

(本件車掌)そうです。

(指令員B)運転席が潰れている。

(本件車掌)はい。

(指令員B)進行方向左側に、先頭車両だけが傾いていますか。

(本件車掌)傾いて…。

(指令員B)傾いてるのは、何両目と何両目が傾いてますか。

(本件車掌)一両目、二両目、三両目です。

(指令員B)一両目、二両目、三両目とも傾いている。

(本件車掌)はい。

(指令員B)ほならね、とこした、床下を見てもらってね。

(本件車掌)はい。

(指令員B)台車、車輪はレールからはずれて、脱線していますか?

(指令員B)車掌さん。

(本件車掌)はい。

(指令員B)車掌さん。

(本件車掌)はい。はい。

(指令員B)現地に、ほな、警察や消防が来とるゆうことですか、もう。

(本件車掌)来ております。

(指令員B)車掌さん、いま誰としゃべっとんのよ。

(本件車掌)警察の人です。

(指令員B)警察の人、来とるんやね。

(本件車掌)はい。

(指令員B)うん。

(本件車掌)あの。

(指令員B)とりあえず、私の言うことをね、もう一回整理しますよ。

(本件車掌)はい。

(指令員B)車と当たったようなことは、ないと思うんやけども。

(本件車掌)はい。

(指令員B)先頭車両の運転台の方が、潰れていると。

(本件車掌)そうです。

(指令員B)それで、前から一両目、二両目、三両目が進行方向左側に傾いている。

(本件車掌)傾いて、あの、副本線の方に、あの、二両目と三両目、二両目がこっちに傾いている。副本線というか、下りの方に。こちらの方に。

(指令員B)一両目は左側、二両目は何処に傾いておるって?

(本件車掌)左側です。

(指令員B)一両目も、二両目も左側に傾いているね。間違いないね。

(本件車掌)はい。

(指令員B)三両目は。

(本件車掌)三両目は、三両目、三両目はちょっと分からないです。

(指令員B)分からなかったら、分からないでいいですわ。

(本件車掌)はい。

(指令員B)ほならね、とこ下、床下の台車を見てもらったら、車輪とレールは、はずれますか?脱線していますか?脱線はしとんの?車掌さん。

(本件車掌)はい…はい。

(指令員B)いいですか、床下の台車を見てもらって。

(本件車掌)はい。

(指令員B)えー、車輪は脱線していますか。まず一両目は?

(本件車掌)一両目は、脱線しております。

(指令員B)四軸とも脱線か。

(本件車掌)はい。

(指令員B)四軸ともね。

(本件車掌)はい。

(指令員B)二両目は。

(本件車掌)二両目は、三両目と二両目の間に入っております。

(指令員B)え~?!

(本件車掌)三両目と二両目の間に、入っているような状態です。

(指令員B)何だって、良く分からんな。二両目は、脱線しているんですか。

(本件車掌)二両目、はい。

(指令員B)二両目と三両目が何だってゆうた。いま?

(本件車掌)えー、食い込んでいるような状態なっとる。

(指令員B)食い込んでいる。

(本件車掌)はい。

(指令員B)二両目と三両目が、食い込んでるんですね。

(本件車掌)はい。はい、そうです。

(指令員B)分かりました。ほならね、いま、JRの社員は、車掌さんと誰が居ますか?

(本件車掌)えー、運転士さんです。ちょっとお待ち下さい。

(指令員B)運転士にこの電話、変わってください。

(本件車掌)はい。

(後続運転士)もしもし。

(指令員B)運転士さん。

(後続運転士)後続ですよ。

(指令員B)えー?!

(後続運転士)後続列車の運転士ですよ。

(指令員B)後続の運転士さんな。

(後続運転士)はい。

(指令員B)当該列車の運転士は、おらんか。

(後続運転士)ぼくも探してるんですけど。

(指令員B)いないの?

(後続運転士)いないんですよ。で、ちょっと良く分からないんですけど、もう、電車がグシャグシャで、もう、三両分くらいグシャグシャの車両あるんで、何処が先頭車両か、ちと分からないんですよ。

(指令員B)あーそ、そんなに、ひどいの。

(後続運転士)もう、グシャグシャです。上下線、上下線に渡って、もう車両が、もう横に倒れて。

(指令員B)完全に横転している。倒れてるの。

(後続運転士)横転というよりも。

(指令員B)傾いているの。

(後続運転士)いいえ、そういう次元では、なくて。

(指令員B)うん。

(後続運転士)前、一番、えー、数えたら三両目くらいは、四両、三両、四両分くらいは、グシャグシャになって、なんて言うか、原形を留めずにプレスされて、こう。

(指令員B)ほならね、後続の運転士さん。

(後続運転士)はい。

(指令員B)何が原因だと思われる?

(後続運転士)僕が最初に思ったのは、車と衝突したように思うんですけど、どうも、その、ぶつかった相手の車のようなものが、ないんですよ。回りに何も。

(指令員B)うん。

(後続運転士)電車の残骸だけが。

(指令員B)うん。

(後続運転士)散らばっていて。

(指令員B)うん。

(後続運転士)両脇の線路の、線路のフェンスが、フェンスが、あの、物が突き破って、車道の方にも、電車が飛び出ているんですよ。

(指令員B)よっしゃ、このまま電話を切らんと、このまま待ってよ。

(後続運転士)はい…。

(※JR西の当初発表が「踏切内での乗用車との衝突事故」としたために、警察発表で否定されるまで、列車が“乗用車と衝突した”と誤報され続けた経緯がある)

 

本件車掌が脱線を現認、まずやることは「防護無線の発報」で、それが電源ロス(バックアップ電源は?)で不可能ならば、発炎筒をかざし後続列車への注意喚起すべきだろう。とにかく二重事故は、最優先に防がねばならない!

上記の会話記録から素直に感じることは、当該指令員と本件車掌の『リテラシー能力』の無さである。「見る、話す、想像する、考える、判断する」といった“人間にとって一番大切な能力”が、著しく欠けているのだ。これは何故なのか?

当時「脱線事故現場から消えた車掌」として、マスコミからずいぶん叩かれ非難された松下氏は、このあとすぐに警察での事情聴取に同行したらしい。ある意味、警察が加害関係者を保護したともいえる。

日勤教育のように個人責任ばかりを追及し、安全よりも利益を優先してきた会社の体質が、省みられていません」

当該列車の車掌だった松下正俊氏は後日、雑誌上にてそう語っています。

(追記/最近になり、例えば『JR西日本グループ 鉄道安全考動計画 2022』によれば「異常時には、現場判断を最優先とする」としている。しかし、列車運行者が独自判断で停車すれば、その心理的負担には耐えられないのではないか、とも考えられます。なのでこれは実効性がとても怪しい)

参考リンク/JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022概要:JR西日本

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~反対方向からは、下り特急北近畿が事故現場に近ずいていた~

『事故発生後、特急列車運転士と輸送指令員Cとの列車無線通話記録』

当該事故発生と同時刻。下り線には、新大阪発 城崎温泉行き特急『北近畿 三号(3013M)』が近接中だった。近隣の住民が近くの踏切非常ボタン(第一新横枕踏切)を押したため、特殊信号発光機が点灯した。

特急運転士は異常を察知し、事故現場の約100m手前で緊急停止した。すぐに防護無線を発報し、多重事故はかろうじて回避された。対向列車は陸橋右カーブを降りスピードが出やすい、相当まずい危機的状況でした(下図6)。

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事故現場付近の車輌状況

⇒『雑音がうるさくて、聞き取りづらいです。どうぞ』一分一秒を争うだろう事故現場において、こんな「ポンコツ通信機器」で報告しなければならない現場が、お気の毒である。まず改善すべきは、情報システムではなかったか?

(※列車防護無線装置は、二次事故を防止するための安全装置。踏切事故など緊急時に当該列車から無線信号を発信し、付近エリアを走行する列車に停止信号を与え、全車輌を停止させる) 

 

対向車輌「北近畿三号の運転士」と、「指令員C」との会話

 

(指令員C)こちら輸送指令です。呼ばれた乗務員、列車番号からどうぞ。

(K運転士)えーと、こちら、3013M、3013Mの運転士です。塚口駅手前の第一新、えー、横枕、えー、踏切、人身事故、えー、列車事故発生です。えー、列車が横を向いて、えー、線路上下線とも支障いたしております。ただいまから防護無線を、発報してます。どうぞ。

(指令員C)5418M列車は、何かと当たってるんですか。どうぞ。

(K運転士)えー、現状が分りづらいですが、車両が横転、上下線とも、えー、上下線ともふさいでいます。

(指令員C)車両横転して上下線ふさいでいる。防護無線発報して下さい。防護無線発報して下さい。防護無線発報して下さい。防護無線発報して下さい。3013M、防護無線発報して下さい。3013M運転士、どうぞ。

(K運転士)3013M防護無線、発報いたしております。

(指令員C)はい。3013M運転士、防護無線発報、内容了解です。
えー、それでは3013M、えー、分る範囲で結構です。詳しい内容を教えて下さい。どうぞ。

(K運転士)えー、列車が、えー、かなり大破しております。何両目か判りづらいですが、第一閉塞、下りの第一閉塞信号機あたり、列車が横転しております。横転、横を向いております。横転はしておりません。横を向いて、上下線とも支障しております。

(指令員C)えー、第一閉塞あたりで、えー、横を向いて、倒れているということ、えー、踏切内、踏切で何かと当たったということでしょうか。どうぞ。

(K運転士)えー、聞こえづらいです…。

(指令員C)踏切内で何かと衝突して、脱線しているのでしょうか。どうぞ。

(K運転士)えー、今のところ、えー、何かとぶつかっているような感じがないのですが、横を向いて曲がっているので、何かと衝突したのだと思われます。どうぞ。

(指令員C)横を向いて曲がっているので、何かと衝突したと思われるということ、内容了解です。えー、それでは、3013M運転士、そのままそこで待機。そのまま待機して下さい。どうぞ。

(K運転士)3013M 運転士、そのまま待機了解しました。

(指令員C)はい、そちら…。3013M 運転士で、再度、えー、横転している場所、もう一度、第一閉塞付近というのは、内容理解できました。えー、詳しく教えて下さい。どうぞ。

(K運転士)え…?内容が聞き取りづらいです。もう一度お願い致します。どうぞ。

(指令員C)えー、3013M 運転士、えー、それでは携帯電話、異常時の携帯電話にて指令まで。

(K運転士)~応答なし~

(指令員C)えー、異常時の携帯電話にて、連絡下さい。どうぞ。

(K運転士)すいません、あのー、雑音がうるさくて聞き取りづらいです。どうぞ。
(指令員C)えーそれ、異常時の携帯電話にて連絡下さい。異常時の携帯電話にて連絡下さい。どうぞ。

(K運転士)~応答なし~

(指令員C)3013M 運転士、異常時の携帯電話にて連絡下さい。どうぞ。

(K運転士)申し訳ありません。あの、何をどうしたらいんでしょう。聞き取りづらいです。雑音がひどくて、聞こえづらいです。どうぞ。

(指令員C)えー、3013M、とりあえず、車掌どうぞ。

(特急車掌)~応答なし~

(指令員C)3013M 運転士どうぞ。

(K運転士)3013M 運転士です。どうぞ。

(指令員C)異常時の携帯電話にて無線、指令まで連絡下さい。どうぞ。

(K運転士)えー、車掌を呼び出すという内容でよろしいでしょうか。

(指令員C)違います。異常時の携帯電話にて、指令まで連絡下さい。どうぞ。

(K運転士)~応答なし~

(指令員C)異常時の携帯電話にて、連絡下さい。どうぞ。

(K運転士)~応答なし~

(※……は、音声不明瞭な部分)

 

 まとめ「一事を以て、万端を知る※1」である

 

そして最後に、当該事故に関する経営者の考え方はどうであったのか。大切なのは「安全に対する考え方」であるのは論をまたない。当時のJR西日本は、日本中の鉄道会社で唯一『余裕時分全廃※2』の経営方針を打ち出した“狂気の鉄道会社”だった。脱線転覆事故は、起こるべくしておきた。その結果の大惨事なのである。

(※1 物事の一側面だけで、凡その全体像が推察できるという諺)

(※2 余裕時分(よゆうじふん)、運行に最低必要な所要時間にプラスし「遅延回復」などを目的に、ダイヤに余裕を与える時間。この余裕時分がないと回復運転はまず機能不能となる)

「事故において会社の責任、組織の責任なんていうものはない。そんなのはまやかしです。個人の責任を追及するしかないんですよ」

JR西日本の元社長 井手正敬氏は、確かにそう語った。そして「自分自身が訴追」される。天網恢恢 疎にして・・・

.•♬ 吹きすさんだ風に怯え くじけそうな心へと 泣かないで この道は 未来へと続いている『蒼茫』

youtu.beJR西日本のホームページ、トップには「福知山線脱線事故」がまず掲載されている。また「安全第一」とも書かれています。希望の光はきっとまだあるだろう、頑張れJR西日本

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JR西日本のHP

▷リンク1/⇒JR西日本 West Japan Railway Company:トップページ

▷リンク2/運輸安全委員会 福知山線脱線事故 事故調査報告書⇒https://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/bunkatsu.html

▷リンク3/残念なお知らせ。JR西日本御坊駅脱線事故について。果たして「反省」は、何処へいったのか??

minminzemi81.hatenablog.com

 

参考、引用/運輸安全委員会 事故調査報告書、ウキペディア、JR西日本

(14.000文字、Thank you for Long sentence reading.) #福知山線事故