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古くから、日本に伝わる「雪ん子伝説」のはなし【日本民話】

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民話『雪ん子伝説』とは、待ち望んだものと一緒に暮らす幸せを「雪のように儚く、幻想した話」だという。この話は小さな女の子に降りかかるであろう数々の、厄災をも暗示しているのではないだろうか?「捨て子、いじめ、神隠し」等々。

さて、十歳になったゆきちゃんは、どうなったのか。

 

【雪ん子】 

 

むか~し、むか~し。あるところに、子供のいない夫婦がおった。

 

二人は毎日毎日お宮さんへお参りしては「どうか子供をお授けください」と願かけをした。ある日のこと、雪がしんしん降る日にお宮さんにお参りしたら、拝殿の横から「オンギャ~オンギャ~」と赤ん坊の泣き声が聴こえた。不思議に想いぐるりまわりこんでみると、かわいい女の赤ん坊が置かれていた。

 

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雪のしんしん降る参道

「ありゃ~これはぁ…神様が願いをかなえて下さったのや」

「そうや、ありがたいこっちゃ」

 

ふたりは我家に抱いて帰り、子供の名を「雪」と名付けた。雪はすくすくと育って、それはそれはきれいな女の子になった。でも普通の子供とは少しだけ違い、変ったところもあったそうな。雪は寒い日が来て雪が降ると元気にはしゃぎまわるのに、夏の暑い日が続くと家の中に閉じこもって、まったく元気がなくなってしまう。

ふた親は「神さまから授かった子じゃ。そりやぁ並の子らとちがっているやろなぁ」と気にもしなかった。そして雪は、十才になった。

 

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むら祭りの日

村祭りの晩のこと。「雪ちゃん、お宮さんのお祭りに行こう」友達が誘いに来たので、雪はきれいなべべを着せてもらってみんなと行った。お宮の境内では松明がたいてあって、その松明の上を飛び越えたら達者になるという。みんな走って行ってそれぞれが松明の上を飛び越えていく。

 

「早よ雪ちゃんもとび、跳んだら達者になるでぇ!」

みんなは口々にそう言って、雪をけしかけた。

「いやや、わたしは跳ばん」

雪は松明から離れたところに立って、火をさけるようにしてた。

「雪ちゃんのいくじなし。これくらいよう跳ばんのかぁ~」

皆は、ヤイヤイ言うてはやし続ける。

 

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雪にはそれがつらくて辛くて、飛んでみる気になった。

サァーと走って行って、松明の上をパッと飛んだ。

そのとたん「パアッ~」と湯煙があがって、雪の身体が消えてしもうた。 

 

「あれ?! 雪ちゃんがおらん、消えてしもた…」

「ほんに、どこ行ったんやろっ?」

「雪ちゃん、雪ちゃ~ぁ~ん!」

 

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和歌山市加太 淡嶋神社にある雪ん子

みんなは大声で呼びながら、あちこち探しまわったが、とうとうみつけられんかった。

「雪の中から授かった子やから、火にとけてしもたんやなぁ…」

皆んなはそう口々に言うて、悲しんだそうな。

 

おしまい。

 

(1100文字、thank you for reading.お題「ささやかな幸せ」