この海のむこうに
夏休みの思ひ出 一年一組 田村未完 カフカフ 蒼い穹には太陽が変わらず輝いている。先ほど私の頭上を横切ったシーサーの影が、今度はいくつも重なるように空を漂いだした。それは幻視なのか、それとも八重山の土地が持つ、隠されたアビリティなのか。足元には私が…
夏休みの思ひ出 一年一組 田村未完 カフカフ ジリジリ焼け付くような日差しが、コンクリートを白く焦がし、立ち昇る陽炎が風景を歪ませていた。 蟟のけたたましい鳴き声が、脳みその芯を直撃し掻きむしる。私はそんな喧騒から逃れるために、人気のない砂浜へ訪れた…
夏休みの思ひ出 一年一組 田村未完 カフカフ 茨野道の先に拡がるのは、どこまでも打ち続く青い海原。波がザッザーッと音を立てながら砂浜に打ち寄せ、潮の香りが鼻腔をくすぐる。大空は晴れ渡り太陽がキラキラと水面を乱射しているというのに、これは何故だろう、…
その親子は何処までも透き通る、キラキラと輝く宝石のような海に、釣り糸を垂らしている。緩やかな風が親子を撫でている。もう陽は、傾きかけていた。 「今日は釣れないねぇ」と、子どもは言う。 「そうだね・・」と、お父さんは言う。 「なぁ、つよし」とお父さんは不意に言っ…