minminzemi+81's blog

あがら おもしゃいやしてぇ~ よう~ ゆわよ ノシ

「この海の向こうに」とりあえず記録し、記憶しておこうか。【神曲】

その親子は何処までも透き通る、キラキラと輝く宝石のような海に、釣り糸を垂らしている。緩やかな風が親子を撫でている。もう陽は、傾きかけていた。

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「今日は釣れないねぇ」と、子どもは言う。

「そうだね・・」と、お父さんは言う。

「なぁ、つよし」とお父さんは不意に言った。

「おまえは、海が好きか?」

「好きだよ」と子どもは言う。

「お魚がいるから好き」

「そうか、そうだよなぁ、お魚は可愛いよな」

「お父さんは、海が嫌い?」

「嫌いじゃないよ、好きだよ」

「ふ~ん」

「あのなっ。お前はまだ小さいから、難しいかもしれないんだけどな・・」と、お父さんは少し間を空けてから言った。

「この海のなっ、ず~っと、ず~っと向こうには、とっても、とっても、大きな国があってな。たくさん沢山の人が住んでるんだ」

「知ってるっ!アメリカ!」

「うん。アメリカではないんだ」

「うん」

「その国の人たちとは、俺たちと見た目がとても似てるんだ。肌の色や髪の毛の色は、アメリカの人から見たら区別がつかないくらい、似てるんだ」

「うん」

「でも、話す言葉や書く文字も違うし、考え方も違うんだ」

「うん」

「それでな、その大きな国と俺たちが住んでる島の間には、誰も住んでいない小さな島が、一つあるんだ」

「うん」

「ちょうど真ん中くらいにあるんだ・・」

「うん」

「どっちのモノだと、思う?」

「うぅ~ん」

「じゃあ、さぁ、いま釣りをしている、この海は誰のものかわかる?」

「う~ん」

「つよしのか?」

「うぅん、こんなに沢山持てないよ!」

「じゃ、あの向こうに生えてる木は、つよしのか?」

「違うよ!僕のじゃないよっ、僕よりおっきいし!」

「そうだよなぁ、お父さんでも持てないなぁ・・」

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親子は釣りをほったらかしにして、空を眺めていた。

「お父さんに、あの雲あげるぅ」

「いいの?じゃあ、つよしには、あの雲あげる」

「ぎゃー!変なかたちすぎる!ギャハハハハッ!」

「なぁ、この空は誰のものだと思う?」

「わかんないっ!」

「アッハハハッ!わっかんないよなぁ、お父さんもわかんないやぁ」

その時だった。

「あっ!お父さん、引いてるよっ!」

 

戦争がおこった!

 

「STOP THE WAR!」

ロックンローラーは、言いました。

「支えてくれた家族に感謝」

ラッパーが、言いました。

「もっと思想を持つべきだ!」

詩人が、言いました。

「もう二度と、こんなことが起こらないようにしましょう」

先生が、言いました。

「戦争とかマジヤバくねぇ〜?」

女子高生が、言いました・・

 

すっかり陽は暮れていた。

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「お父さん・・今日は釣れたの、一匹だったねぇ~夕ごはん、足りるかなぁ?」

「おまえなぁ・・こないだもそう言って、ごはんおかわりしたのに、残したろう」

「うぅ~ん」

「大丈夫、足りるから。きっと足りる!」

その時のお父さんの顔は、何時になくとても厳しく見えました。

 

▽オリジンはこちらで๑

https://youtu.be/skHsCRuyc-U?si=fyWFpLHQkKsGiG_R

詩人は時代性を鋭くエグってくる。才能がとてもあっただけに、事故で亡くなったのがとても悔やまれる人物だった。

〇不可思議/wonderboy

1987年生まれ~2011年。不慮の交通事故により早逝した。学生の頃より谷川俊太郎に詩作の影響を受けていた。谷川俊太郎の詩をラップ調にした「生きる」を披露し、谷川本人から直接音源化の許諾を得た逸話が遺る。

(Thank you for reading, let's have fun.)