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たかしが大学登山部で不思議体験した顛末 「SAVE OUR SOULS」【山の怖い話⑧】

たかしが大学登山部

不思議体験した顛末

「SAVE OUR SOULS」

※これは以前紹介した「谷川岳からの救難無線の怪」のリライト版です。

https://minminzemi81.hatenablog.com/entry/2024/09/23/031516

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⛰️ 谷川岳群馬県新潟県の国境に位置し日本有数の豪雪地帯である。かつて氷河期には此処に氷河帯が存在し、これらにより渓谷が深く抉りとられ一ノ倉澤などの断崖絶壁が聳えている。それが昭和期に多くのクライマーを虜にした。太平洋と日本海の低気圧がぶつかる。天候は猫の目の様に変わり、滑落遭難事故が多発する。世界一の山岳死亡事故数が記録されギネス登録もされた。

⛰️ 有名な衝立岩、そんな「ヤ場」を登りたがるヒト(垂直登攀)も沢山いたそうです。昭和のアルパイン黎明期には一ノ倉澤、幽の澤などで功名心はやるクライマーが、滑落死亡事故を何度も繰り返したのです。余りの犠牲者の多さからやがて「魔の山」とか「人喰い谷川岳」の異名で呼ばれるように。そんな哀しい山岳史と相まって、怪談じみた逸話の宝庫にもなっています。

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あれは確か10月頃だったか。たかしが大学の登山部室で無線機のエアチェックしていた。すると「なんかSOSに聞こえる波入るんだけどさ…?」とポン友の田口が相談してきた。トントントン ツーツーツー トントントン※1…確かに長点、短点を連続3回クリックする連続音が聞こえる。その方向を探ると上越国境の谷川岳辺り、信号強度はとても高い。これはもう間違いなかった。それでクラブ顧問教授に連絡し、車を二台だしてもらった。でも警察にはまだ確証が無いので、とりあえず110通報は後回しにする。

谷川岳の駐車場に車を停めると冷たい風が頬を撫でた。晩秋の山嶺はすでに冬の気配を孕み、初冠雪も近いのだろう。登山者の姿もまばらだった。「この時間に山に残ってる人なんてまさか、いないよなぁ…」田口がぽつり呟く。彼は何度もアンテナを確認しながら無線機の音に耳を澄ませていた。微かにではあるが、依然としてSOS信号は流れ続けている。「うん!方向は、天神平の方角だな。それで間違いない」登山顧問 高橋先生が細密山岳図をクルマのボンネットに広げ、そう言った。

手慣れたもので、我々はA班(体力組)とB班(頭脳組)にルート分けし、A班は高橋先生、たかしと田口、後輩の菊池の四人グループと決まった。ここからロープウェイで登れば天神平はすぐだが、すでに最終便は終わっている。徒歩で登るとなれば暗くなる前に向かう必要があった。「とりあえず現場確認に行くしかないな。ここで引き返すわけにはいかない」高橋先生の言葉に熱血部員達がうなずく。ヘッ電をそれぞれ頭に括り付け、念の為に最低限の登山道具も装備した。我々は登道を慎重に進む。

登道を進むにつれ吐く息が白くなる、山の空気が変わった。枯れ葉が足元でガサガサ音を立てる。山嶺では空っ風が時おり走り抜け、木々の悲鳴が渦巻いている。「SOSの発信源、もうすぐだ」無線機の信号が次第に強くなる。そこで奇妙なことに気がついた。何故か発信の間隔が一定なのだ。まるで誰かが手動ではなく機械的に繰り返しているかのように。「あれぇ…おかしいよ。普通さ、遭難者が打つなら、ツートンの間隔に乱れがあるはずだけどね」「自動発信装置なのか─?」「こんなところでぇ─?」嫌な予感がする。しかしいまは、遭難者を見つけることが先決なのだ。

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やがて登山道から脇に少し外れた支稜に、朽ちかけた廃小屋の黒影が見えてきた。「あぁ…アレなのか?」田口がピッケルで示した。どうやら無線機の信号は、その小屋内から発信されているようだった。いまだ状況がよく判からない俺たちは、慎重に近ずいていった。入口扉には錆びついた南京錠が掛かっていたが、よく見ると蝶番ごと壊され歪んでいる。誰かが無理くり入った痕跡だろう。「オイ、開けるぞッ!」たかし達が鉄扉を開いた。ギィ~と嫌な金属音がし、黴臭い異臭が小屋から漏れ出した。

そこでヘッ電ライトが照らしだしたモノとは─床に古錆びた無線機がポツンと置かれ、カチ、カチ、カチとSOS信号を繰り返し発信していた。しかし肝心の発信者の姿はどこにもなかった。「ぅん?誰もいないのか…?」次の瞬間、背後でザッ、ザ、ザザッと落ち葉を踏みしめる足音が聴こえた。俺たちはサッと振りかえったが…しかし、薄闇が拡がっていただけだった。ライトを向け周辺探索しても、矢張り誰もいない。「いや、確かいま…そこで…ねぇ」と菊池、「気のせいじゃ…ないよなぁ?」田口が小声で呟く。俺たちは息を殺して周辺の気配を探る。だが木々が風に揺れる音と自分たちの荒い息遣いのほか、何も聞こえない。「とりあえず─あの無線機、止めてみますね」菊池がソロソロと近づきSOS発信していた無線機のスイッチをパチリと切った。

一瞬、山小屋の中は異様な静寂に包まれたが……カチッ…カチ……カチッ…「おいおいおい、コレは嘘だろぉ─!」確かにスイッチを切ったはずなのに、無線機はまたSOSを発信し続ける。まるでそこに意志を持った誰かがいるかのように。「おい、もう、冗談やめろって…」田口がもう一度スイッチを確認する。電源は入っていなかった。「これ…切れてるのに…動いている─何故?」冷汗が背中を流れた。俺たちは恐怖に駆られ小屋の外へ出ようとした、その時「…ぁ…すぅ…ぇ」どこか遠くの、いや耳元でかすかな呻吟が聞こえた。「おぉ~い!一体、誰なんだよぉ~!」俺たちは少しパニックになり周囲をアチコチ照らす。やはり誰の姿もない。ただ山風が木々を揺らすばかり。

何者かが、こちらをジッと伺っているような気配が、ハッキリと感じた。高橋先生が「おいッ、もう戻ろう!これは俺たちの手に負える話じ…」言い終る前に、突然「バンッ!」背後で山小屋の扉が勢いよく閉じた!外には誰もいないハズなのに。俺たちは顔を見合わせ扉を蹴り飛ばし、小屋から抜け出した。脱兎の如く山道を駆け降ってゆく。駐車場まで戻ったときには、全員が息を切らし膝に手をつく。「はぁ…はぁ…はぁ…なんだったんだ…?あれはぁ、さぁ…」田口が震える声で言う。ベテラン高橋先生も、完全に顔色を喪っていた。「とにかく、けっ、警察に連絡しよう」そして俺たちは携帯取り出し地元警察に通報した。

後に警察からの事後報告によると。まずあの廃小屋には誰もいなかった。そしてもう一つ。警察が無線機を調べたところ、電源は無くスイッチは切れたままだった。「それぢゃあさぁ…小屋で聞いたあの声は─?」俺たちはまた言葉を喪った。それからしばらくの間、登山部の活動はとても慎重なものになった。もはや休止状態といっていい。誰もがあの日の出来事は忘れることはできない。谷川岳の姿無き遭難者のSOSは、いまだ流れ続けているのかもしれない……

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~後日談~

あれから数年たち、既に社会人となった俺たち登山部OBが再び、とある居酒屋に集結した。あの夜にあった出来事について喧々諤々話し合った。だけども、どれだけ考えても、理屈では説明のつかないことばかり。警察の話では、あの山小屋には誰もいなかった。だが確かに俺たちは何らかの声を聞いたのだ。あの無線機は電源すらないのにSOSを発信し続けていた。この謎、いったい何だったのか─?!

どうしても気になった俺たちは、もう一度谷川岳に向かうことにした。今度は午前中に登り、問題の廃小屋を再訪することに。しかし。俺たちがあの時発見したあの廃小屋は影も形もなく、その周囲をいくら探ってもそんな痕跡すらない。探索諦めて山を降りた。

地元の初老の方に、それとなく事情を聞いてみた。すると驚くべき話を聞かされた。「…あぁ、そうそう。あの辺りにはね、昔、小さな避難小屋があったんだよ。でもねぇ…確か50年近く前、デカい台風※2で崩壊してしまってねぇ。いまはもう跡形も無いはずだけどさぁ…うん。で、それが、どうかしたの……?」 (終)

(※1 モールス符号の打電式通信機器。昭和時代は未だ現役で使用されていた)

(※2 昭和54年台風20号は、観測史上最低の中心気圧870hPaを記録する超大型颱風だった)

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▷推し曲/語り継ぐこと

https://youtu.be/ivlPeiD7xNw?si=mYIj_a0kpsemRWSz

▷前回の話/結崎彩乃が谷川岳にソロ登山挑んだ話

https://minminzemi81.hatenablog.com/entry/2025/08/28/143832

(Thank you for reading, have a safe climb.)

#谷川岳#10月3日は登山の日#ライトノベル