壱章 まさに蜘蛛の糸を掴む話
平成✕✕年。県立矢利寿木高校の新学期が始まった。春は出逢いと別れの季節という。校庭の桜は既に葉桜となり、たかしは高校二年生になった。
新担任の紋切り挨拶を聴き流し、座るべき席を適当にくじ引で決め、誰もやりたがらない学級委員選びなども行い、それで簡単な始業式が終わった。
暇だ…何気に見慣れた校内をブラブラ歩いていると、旧校舎裏で奇妙な光景を目撃した!絹糸みたいな白い細糸で絡め取られた女子生徒だ!
腕を回したり脚をあげたり、まるで操り人形のよう、奇妙な格好でジタバタしては却って絡まり続け動けなくなっていた。変なヤツがいるもんだナ…
「いやいや、待てよ。あれは確か…」
彼女は同じA組になった、怪デェパイ乙な「彩乃委員長」だ。ぺえすけな、たかしの眼力に間違いなかった!胸元で瞬時に判ったぁ~w
実は彼女とは古くからの幼馴染だったのだが、自分家が田舎から引越してから顔を合わす機会もなくなり、すっかりその存在が抜け落ちていた。
変だな、これは何故だろうか──?
それが今日、彩乃と同じクラスとなって、少なからず驚いた。彼女は確か「春から転校してきた」とか言ってたような…とりま、目を逸らしやり過ごそうか。
「ねっ。そこの君っ!ちょっとこれ、助けてくれる?」
「ッ……いやぁ~これは彩乃委員長さん。何してんの?新しい遊び?」
「だからさ、正義マン。ワタシを助けてよっ!」
正義マン…か。たかしの子どもの頃の呼び名だ。何時も正義のヒーローに憧れていたから、そう呼ばれたんだっけ…彩乃にゆっくり近付き、左の二の腕辺りに触れると、白糸がシュルシュル伸び、たかしの右手にたちまち絡みついた。その感触は全く感じないが、とにかく気味悪い。
「うわっ!コレ止めろよォー!」
「はぁ、あっ、これはねっ、結界怪異っていうんだって。完全解には"五人の協力"が必要らしいのよ?君にも…絡んぢゃったね…そっかぁ」
訳の分からないこと囁きながら、彩乃はニッコリと微笑んだ。なんて奴なんだよ…てか、オレはいま何してんの?白糸がガッチリ絡まってるしさぁ。
コレどうやって外すのよ…たかしの右手は、既に彩乃の左肩辺りと白糸で一体化している。左手は辛うじてまだ使えるが、これで触れたら終わりぢゃね?
夕陽が校舎の陰を長く延ばしてゆく。
嫌な予感がしてきた。時間をかけて、二人してのカイコ化は回避出来たが、完全に白糸を払拭出来たワケではなかった。いくつかは執拗く残ったままだ。
それにしても。作業しながら実に厄介な話を聴いた。「この学園には古より“白糸に結ばれし者は運命共同体”となるといった都市伝説があって、それが「結界怪異(むすびのけがれ)」と呼ばれているものらしい。
この白糸が絡んだ相手は五人一体となり、全員が無事でないと生き延びられない。もし一人でも欠けると、残りの者たちも存在が次々消え始める」とか委員長が宣った。
「君にもこの糸が絡んだってことはサ…きっと結界のお仲間だねっ!」
「えぇ?!てことは、俺達は運命共同体…と?」
「うん。だからさぁ、あと三人を見つけなきゃ、だね!」
彩乃は軽い調子でこともなげに言う。だが、たかしはそのことに戦慄した。一体どういう基準でこの結界怪異に選ばれたのか…?これまでに白糸怪異に囚われた五人組は、全員が行方不明になったというヤバい話だぞ。
たかしは右腕に絡みついた白糸をジッと見つめていた。まるで絹糸のようで、滑らかでとても細く光の加減では透明化する。しかし引っ張っても切れないし、一旦絡まると解くにはとても厄介なシロモノだった。
「これ本当にタダの糸なのか─?」と、たかしは疑った。それほどの危険性はなさそうだが鬱陶しさが半端ない。
「ねぇ、どうするぅ?あと三人見つけなきゃだけど?」
委員長は白糸を指先でクルクルもて遊びながら、いたずらっぽく微笑んだ。その表情は恐怖に震えるたかしとは対照的、まるで怪異現象すら愉しんでいるようだった。
「彩乃委員長。お前…それで怖くないのか…?」
たかしの問いに、彩乃はクスッと笑いながらクルリとターンして見せた。白糸がふわりふわりと宙に舞い上がる、彼女の動きに呼応するようトルネードしてゆく。
「怖い…?うぅ~ん。怖いって感情は勿論あるんだけど。それよりさぁ、ワクテカッしちゃう、て感じ?」
「ワク…テカって…お前さぁ」
「だって。こういうのって、まるで運命の糸みたいじゃない?どっかの誰かと繋がってさ、一緒に宿命を背負うのってね。ロマンチックなことだと、思わないかなぁ─?」
たかしは絶句した!こいつ本気で言っているのか。
「五人でひとつ。それがこの怪異ルールか」
たかしは彩乃を怪しんだ。なぜ彼女はこんなにも落ち着いているのか。そもそも、どうしてこの怪異のことを詳しく知っているのか?
まさか怪異の正体……春先は日の陰りが早い。辺りはすっかり暗くなってきた。
「彩乃。君はどうして…そんなに冷静なんだ?」
彼の疑いに彩乃は、少しだけ視線をおとし微笑んだ。
「実はね。コレ知っていたのよ!過去にこの怪異に囚われた五人組のことも、ネッ!」
知っている!!たかしは息を呑んだ。やっぱこいつヤバい奴確定だ。早く逃げた方がいいかな…でも気になる。
「それってさ一体、どういうことなんだよ─?」
「私の姉がね…四年前。この怪異に囚われたの」
校舎裏を吹き抜ける春風が、白糸をふわふわ揺らめかす。まるでそれが自ら意思を持ち、この二人の会話を聞いているかのように、周囲をクルクル回転している。
彩乃には歳が四つ離れた姉、玲奈がいて、この学校にも在籍していた。そして突然、謎の失踪した。以来行方が解らないと…
「そんなおかしな話ないだろ?全員が綺麗サッパリ消えるなんて、あり得ない…」
「そう。だからね。私はずぅーと探しているの。この学校に転校したのもそれがね、目的だったの。で、新学期早々怪異に捕まったって訳、フフッ」
彩乃は白糸を指先でピンピン弾きながら笑った。たかしの背筋がゾクリと寒くなった。彩乃の瞳には笑顔とは裏腹な“深い闇”が宿っていた・・
そしてたかしは理解した。この怪異に囚われた者は単なる被害者ではない。怪異に選ばれるべくして選ばれた者なのだ。
そしてまた我々も選ばれたと云うのか…
「たかし君。私たちはもう運命共同体よ。あなたは怪異から、もう逃れられないのだから、ねッ?」
彩乃は顔の横で人差し指をたて言った。白糸が指の周りを回転する。たかしが、なにか言い返そうとした時、旧校舎の二階窓から聞きなれた声がした。
「おぉ~い、アチチなお二人さん。何してんだよッ!」
たかしが見上げると親友の優斗が顔をだしていた。去年入学式の時に知り合いとなり、いまも時たま連む仲だった。ドタドタ階段を駆け下りる音がする。
「だからさぁ~お前らナニしてんだよぉ!
学校で─?」
あ、そうか。他の奴らからすれば、校舎裏庭でイチャコラするバカップルにしかみえないのか…遠目には白糸が全くみえないのだから…急に恥ずくなりたかしは赤面した。
振り返るとそこには、友人優斗がニヤニヤしながら立っていた。素早く駆けてきた彼の足元には、早くも白糸がシュルシュル絡みつき始めていた。
「おいおいおい、冗談だろッ!
なんだよコレぇ~?!」
優斗は白糸を振り払おうと必死にもがいた。しかしその動きが逆に糸を自分に引き寄せる結果となり、瞬く間に足元から膝へ腰へと絡みついていく。おかげでこちらの糸は全て外れたようだ。
「ちょ、ちょっと、待てよぉ!これどんなマジックなんだ?たかしッ!お前、何やったんだ」
「俺じゃない!気をつけろよ優斗。
動けば動くほど…」
「もっと絡まるってか…ざけんなよぉ─!!」
優斗は怒鳴りながらも必死にバランスを取っていた。その足元の糸が微かに震え何かを探るように動いた瞬間。
「・・・!!」
突然白糸がギュッと締まり、優斗の体がグラリ傾いた。その時、彩乃がスッと前に出て優斗の腕を支えた。
「ねぇ君、優斗君?もう諦めた方がいいわよ。あなたが三人目で、ほぼ確定なんだからさ…」
「なっ…三人目ってぇ…何のさぁ?!綾波─」
「わたしはね、彩乃。よろしくねッ!」
彩乃の目はやはり楽しげだった。まるでこの状況すらもTVゲームのように受け止めているかのような、そんな雰囲気を漂わせている。彩乃メンヘラだったのか…
「ねぇ、面白くないィ?運命の糸に絡め取られるなんてさ…こうなったら、もう私たち一心同体なんだからぁ!」
「じょ…冗談ぢゃねぇ~よッ!」
優斗は再び暴れようとしたが、彩乃はその腕を離さなかった。その力強い握り方に、たかしは違和感を覚えた。こいつ、本当にただの委員長か?
たかしの脳裏に彩乃が語った姉の一件がよぎる。彼女が言った「探している」という言葉の真意とは、いったい何なのか。自らさがす…
「さぁ、あと二人。見つけなきゃねッ!」
彩乃はテンションかかった白糸を、ツンツン指先で弾きながら笑った。その姿に、たかしの背筋がゾクリとまた寒くなった。。
結崎彩乃 ゆさきあやの(18)
県立矢利寿木高校(JK2)
新学期よりA組委員長
▷古来より続く「風を鎮める巫女一族」として知られる結崎家に生まれた。彼女の家系は代々、村を囲む山々を繋ぎ結界を保持し、古の怪異「闇神」を封じる役割を担ってきた。結崎家の次女。
(※蜘蛛の糸を掴むとは…自分さえよければそれで良しという“利己主義に走ると罰が下される”という教訓話、芥川の蜘蛛の糸より)
BGM♬.*゚春よ来い
https://youtu.be/qX7pFYH9O04?si=E3SVbdBn7racNqXc
▷次のおはなし 結界怪異物語 弐話
https://minminzemi81.hatenablog.com/entry/2025/04/13/141144
ᨒ𖡼.𖤣𖥧๑… ᨒ𖡼.𖤣𖥧๑… ᨒ𖡼.𖤣𖥧๑
※Ai arrange 小説とは大まかな世界設定や、キャラ立てを予め決めchat gptに文章を頼む。秒速で返して来る(驚!)さらに私がrewrite(必須)かけ仕上げた。
実際、ウルトラムズく楽ではなかったね。意表つかれ、予想外の暴走あり、七転八倒悶絶した…w しかし“ディレクションさえ間違なければ”ワリとイケると想えたね。今後に期待๑
☝🏻彩乃のキャラ絵もAIさんが描いたもの。結構…萌♡アベレージ!新たな可能性が伺える…
(Thank you for reading, to be continued.)
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