じつは数年前から眼をひどく悪くしてテレビやゲームもやらなくなったし、さらに長文読書することも諦めていた…それに加え昨今のコロナ籠りなども付加され、何だかんだ物事全般やる気が出ない、情けない状態に陥った。いまや危機的状況なのかも?
いや、まだまだ大丈夫だろ。もちろんこんなブログ書くのすら大変だったりする。スピードはガク落ちながらまぁ、それはそれで。ほんと歳をとるのはイヤな事だなぁとつくづく思う、今日この頃デス。
最近、音声朗読にハマっている
ああ、そうだ。それで、YouTubeにアップされている小説朗読などを、聴くことにスイッチした。寝入りばなに朗読劇を聴きながら、色々想像をめぐらす愉しさを、これにより覚醒しました。
2ちゃんねるの洒落怖板で、一番興味深くかつ面白かったのが『師匠シリーズ』だった。2003年あたりからSNSでいまも続く、名物シリーズ。その頃といえば、まだスマホなどなかった時代。こりゃ隔世の感だよね?
洒落怖…ある時、2チャンでこんな板がたった。
「1.名前:名無しさん@お腹いっぱい。
投稿日:2000/08/02(水)02:57
いろんな媒体で恐い話を聞きますけど、本当に恐い話ってあまりないですよね?そこで、ここを利用してあなたが聞いた、または体験した、洒落にならないくらい恐い話を集めて、さらにそれを厳選して「究極の恐い話集」を作ってみませんか?別に実話でなくてもいいです。要は「半端じゃなく恐い」が大切なので。それではみなさん、本から探すなり、友達から聞くなり、ネットで探すなりして下さい。」
(※いや、確かスマホは売り場にはあった!「Nokia」だったかな?とても買えなかったダケ、だよね…笑)
チョッチ「師匠シリーズ」の解説
作品時系列として、1991年~2003年辺りまでの時の流れがあり、結構な話数(百話以上)となっている。投稿者が思いつき(趣味?)で始めたためか、やはり話の並びがなんとも判かりずらい。最初に現在周辺とその結果を描き、徐々に過去へ遡っていくといった手法、時系列をあえて判りずらくした。これは、読み手のアタマを混乱させるに充分で、スッキリしない。
でもこれが師匠シリーズの特長でもあり、面白いところでもある。まず師匠との出逢いがあり、さらに師匠と師匠の過去話を連結してゆく、さらに主人公が師匠と呼ばれる立場も描く。まぁ、ネトにありガチ、なかなかの不親切設計だが、いやはや話はトンデモ面白い!
ストーリーの流れとしては、過去経験ばなしとして「主人公ウニの回想譚」として語られてゆく。メインとなる「俺(ウニ)」。眼鏡青年で、少し霊感あり、大のオカルト好き。彼が師匠シリーズのストーリーテラーとなる。
そして、通称「師匠」がいる。大学院生で、仏教美術を専攻。この人は、ウニのオカルト道の師匠であり、視える者として話中で大活躍する。話の始まりに「師匠に聞いた話だ」とあれば、この師匠からウニが伝聞したことになる。
さらに魅力的な女霊能者の「加奈子」。師匠のさらに師匠筋となる設定。そして後半から、突如登場するゴスロリ厨坊の「音響」もいる…だいたいこの四人の能力者による、縦横の相関関係で、オカルトストーリーが語られて逝く。
やはり登場人物の理解がややこしいねぇ。
○俺(ウニ)…年齢18~(1978年生まれ)、師匠シリーズの語り手。地方O大学の一年生、高知の山間部の出身。度の強い眼鏡をかけた好青年、大学の文芸サークル入り。
○師匠…年齢25~(1972年生まれ)、O大の大学院生、仏教美術を専攻、大学院の図書室司書。シリーズの主人公。ウニの先輩(師匠)筋であり、加奈子の弟子にあたる。
○浦井加奈子…年齢30頃(1967年生まれ)、大学院生。魅力的なミステリアス女性、師匠さえバケモノ扱い「ホットパンツ師匠」。男言葉を使うので性別ややこしい。
○音響…年齢14頃~(1982年生まれ)中学三年~高校二年。ゴスロリの女子中学生。のち、ウニと同じO大学に入学し、服部調査事務所でアルバイト、ウニの弟子的存在に。
○歩く…倉野木綾。年齢21~(1976年生まれ)O大学生文学部、学部卒業後に県外へ就職。師匠の彼女であり、師匠をもってして「俺より凄い」という超能力女性である。
○京介…山中ちひろ。年齢21歳~(1976年生まれ)、職業フリーター、喫茶店ボストンにいた。ショートカットの背高い男前美人。ネト上のオカルト板の住人。氷室京介ファン。
▽参考/加奈子さんの性格、生態がよくわかる。
「師匠シリーズ」始まりの作品
たしか【師匠シリーズ】の始まりは…𖠋𖠋「小人の怪談」だった。短文でサクサク畳み掛けてくる、小気味よい文体にはグッときた!
そのつかみ(冒頭部)引用します。
『189 ›› あなたのうしろに名無しさんが・・・
さて、怪談じゃないけどこんなのはいかかが?
オカルト大好きな俺は、知り合いやサークルの後輩先輩に、節操無く「なんかない?怖い話」と聞きまくる癖がある。で、俺の歴代の彼女にも聞いてるわけだが、全員一回だけそういう心霊体験をしてるという。それが変な類似点があって、一人目が「おかあさんと一緒に買い物に行った時、道端で小人が踊ってるのを見た」二人目が「北海道に友達と旅行に行ったとき、コロボックルの死骸を見た」三人目が「金縛り中に小人みたいな童女がお腹の上に乗ってた」いずれも小人が出てくる。不思議だ。四年くらい前に俺のオカルト道の師匠が「最近、小人を見るパターンの怪談が増えている。5ミリの女の亜種もこの変形だ。あんまりいい傾向じゃない」と言っていた。いい傾向じゃないとどうだ、というのか分らなかったが、妙に怖かった。師匠に彼女の話をすると「次は多分、大きい人を見てるよ」と予言されたのだが、去年、久しぶりに彼女ができたので聞いてみると、彼女も一回だけ変な体験をしており…「夜中に窓の外を、異常に大きな人影が通り過ぎて行った」ひ~いまにして思うと、あの師匠の方が怖いわ!5、6人殺してるという噂が流れてたし。怪人だな。この人にまつわる話も色々あるが、また今度。』
この小人話の流れは、長編『巨人の研究』 という作品に、繋がるのだが。長いウンチク噺のあげくに、何ともびっくりな結論を魅せるのだ。
▽自分的には少しだけ霊感(みえない)ある?よく解からない妙な体験するから。友ヶ島に渡る前のこと「金色の小人」をとらえる話w
それで、数作読んで(聴いて)…ふと、思った。この文章は単なるチャネラーではない。文章はまだ粗いが、かなり小説を書きなれた人物のようだ。きっと投稿者は、オカルト好き暇ありお喋り好き大学生(の設定?)なのか。シリーズ構成といい、執拗な描写力といい、作中キャラの立て方など…「これ維新がデビュー前後にボツ食らった作品を、SNSへ腹いせ投稿したのかもしれないゼ?」※とすぐ思ったのさ。知らんけどぉ(大阪風)。
(※ネタや文体など類似性がとても多く散見される。ヘタするとパクリや黒歴史と言われかねないね、どうなんだろか)
▽続きが気になる方は、朗読音声版でどうぞ。ホント興味深い。
ずいぶん感心してしまった作品
〈師匠シリーズ「双子」あらすじ&感想〉
探偵事務所でアルバイトしている師匠と加奈子。そこへ依頼者の羽川里美から「生き別れたという、双子の兄を探してほしい」と頼まれる。彼女の話を聴いて、兄が住むという岡山県北部の磐座村(架空)へ、二人は旅立った。そこでは、双子を恐れ忌み隠す人々、沢山ある道祖神の石像、歌詞が少しだけ違っている「かごめかごめ」そんな数々の謎解きと、霊的な冒険を続けることになる。
ずいぶん長い話となるのだが、本編ストーリーに日本の土着信仰や古い神話などを巧くミックスさせて長編を中弛みさせず、程よい緊張感を保って展開していますね。ネトに上っていた頃、チャネラー達をずいぶん熱狂させたハズ?単なるホラーというよりも「推理ミステリー」として仕上げています。細く散りばめられた逸話を積み重ね、ラストまで持っていく構成力にも感心した。
なのでこの書き手は、プロのライターと想える。いったいこの“投稿者ウニ”とは、何者なのか、やはり維新か?例によって本編に入る前の「マクラ噺」が矢張りうまいね。師匠と加奈子さんが“うるう秒の実証実験”をやろうとしているのだが、それがね可笑しい!繰り返し描写される「ホットパンツ」エモ!
【師匠シリーズ】「双子0時間の話」
『にい、さん、しい、ごお、ろく、しち、はち、きゅう、よんじゅう、いち、にい…机の上に置いた目覚まし時計の秒針の動きを、オカルト道の師匠、加奈子さんが数えている。僕はその様子をじっと見守っている。時計の針が深夜0時を指したところで、師匠が秒針を数えるのを止め、顔を上げて僕に「どうだ?」と訊いてきた。
「いや、どこも飛んでないです」そう答えると、師匠は「うにゃあああ~」と喚いて畳の上にひっくり返った。「わっかんねぇ!」そう言って足をバタバタとさせる。僕はそのホットパンツからのぞく太ももにドキドキし、目のやり場に困っている。夜に師匠の部屋に呼び出されて「実験」とやらにつき合わされているのだが、なにがやりたいのか、こっちこそわからない状態だ。』
この「双子0時間の話」は、本編1~4へ続くストーリーと関係ない挿話。“何らかの伏線”だと思っていると、とんだ肩透かしとなる仕掛け。それとも一話完結話として主人公二人の関係性を、軽く枕で語っておいたのかも?
▽師匠シリーズ「双子」は、0から4まで続く。これ、ホント面白かった!オカルト話のお好きな方にピッタリでぇ~す!
▽続く本編ストーリー①はコチラから
▽リンク/pixiv 「双子」オリジナル版。ほんとウニって芸ないネームだね!
おまけ話的〈ちなみに庚申講とは?〉
天帝を信じ善行する者には恵を与え、天帝に背き悪行する者には天罰を与える。それらは寿命にも影響を及ぼすという。そして、庚申の日に人間の体内にいる「三尸の蟲(さんしのむし)」が、人々が寝ている間に「天帝へ悪事の報告しに行く」それを阻止するため、一晩中眠らずに宴会フェスを行う。
昭和の中頃あたりまで、庚申講はたしかに行われていた。小さな幼児頃の私の記憶なので、はっきりとはしないが「近所の婆さん連中が、世話役宅へ集まり、夜中までワイワイと騒いでいた」のをかすかに覚えている。その御神体は、神道系では「猿田彦神」が祀られる。申は猿だから!「青面金剛」は仏教像ではなく中国道教に由来し、日本の民間信仰の中でさらに発展した尊像。庚申講の本尊であり、三尸を押さえる神様。
▽師匠シリーズには、お手軽コミック版もあります。まだ読んではいないけども。キャラ絵が少し違う気が…
2013年、漫画版がスタート。作画は片山愁、タイトルは『師匠シリーズ~師事~』少年画報社、ヤングキング。2014年、加筆小説版も出た。こちらは双葉社より。
(※師匠シリーズは、二次使用と拡散(商業利用以外)が認められています。YouTubeやネトのまとめなどで、ほぼ全編の閲覧が可能です。一部商業ベース化されたものが不可となる)
(5000文字、thank you for reading.) #師匠シリーズ 今週のお題「やる気が出ない」